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「やさしく頑張る」ベーシック ・第3回/全4回

自分を勇気づける技術

「自分に優しくしましょう」と聞くと、どう感じますか。

甘やかしているみたいで、抵抗がある。 優しくしていたら、頑張れなくなりそう。 そう感じる人は、少なくないと思います。昔のわたしもそうでした。

でも、この直感は実は逆なんです。

自分に厳しくすれば伸びる、というのは半分しか合っていません。 自分を責める言葉は脅威システムを起動します。第1回で見たとおり、脅威システムは瞬発力は出ますが、燃費が最悪で、長距離は走れません。 しかも心理学の研究では、自分を責めやすい人ほど、失敗のあとの立ち直りが遅く、先延ばしが増え、挑戦を避けるようになる傾向が繰り返し報告されています。 逆に、自分への思いやりを持てる人のほうが、失敗から学び、再挑戦する率が高い。

つまり、自分への優しさは、頑張らないための言い訳ではなくて、頑張るための燃料です。 今回はその燃料の入れ方を、3つの道具でお渡しします。

道具1:不安の読み替え——不安は「挑戦ゾーン」の入場チケット

新しいことに挑むとき、不安になりますよね。 そのとき「不安になるようじゃダメだ」と思う必要はありません。

考えてみてほしいんです。 蛇口をひねれば水が出ることに、不安を感じる人はいません。 確実にできるとわかっていることに、不安は生まれないんです。

安心ゾーン 不安ゼロ・成長もゼロ 挑戦ゾーン 不安がある=ここにいる証拠 無理ゾーン 不安が強すぎて学びにならない 成長は、まんなかの輪でだけ起こる

不安を感じているということは、あなたが安心ゾーンの外——挑戦ゾーンにいるということです。 不安は弱さの証拠ではなく、挑戦の証。むしろ入場チケットです。

ただし、外側の輪には注意してください。 不安が強すぎて眠れない・思考が回らない状態は、挑戦ではなく無理ゾーンです。 そこにいるときの正解は、根性ではなく、一段内側に戻ること。ハードルを下げるのは、負けではなく調整です。

「不安だ。ということは、ちょうどいい挑戦をしてるんだな」 この読み替えができるだけで、不安と一緒に前へ進めるようになります。

道具2:感情の裏を見る——車とガソリンの話

わたしは今でも、尊敬している人の前に出ると「よく見せたい」「失敗したくない」という気持ちが出てきます。 以前はこの気持ちに飲まれて、緊張で固まっていました。

今は、感情を車だと思うようにしています。

表に出る感情 = 車体 緊張・怒り・「よく見せたい」・落ち込み 日によって車種も色も変わる 動かしているのは? 根っこの欲求 = ガソリン 「期待に応えたい」「ここにいていいと思いたい」 こちらは、めったに変わらない 車体に飲まれず、ガソリンまで見る。見えた瞬間、感情は「情報」に変わる。

表に出てくる感情は、車体です。日によって車種も色も変わります。 でも、それを動かしているガソリン——根っこの欲求は、そう変わりません。

「よく見せたい」の裏には、「この人の期待に応えたい」がある。 「イライラする」の裏には、「本当は大事にしてほしい」があったりする。

車体に飲まれているうちは、感情はただの嵐です。 でもガソリンまで見えると、感情は情報に変わります。 「緊張してるってことは、それだけ大事な相手なんだな」——そう扱えるようになると、感情はあなたの敵ではなく、計器盤になります。

道具3:勇気づけの言葉——3ステップの型

さて、ここからが本題です。 挑戦の前、自分にどんな言葉をかけるか。

追い込む言葉は、こうです。 「なんでできないんだ」「こんなことで緊張してどうする」「もっとやらなきゃ」。 これは怖さをガソリンにする言葉。第1回で見たとおり、いつかガス欠します。

かといって、根拠のない「大丈夫、できるできる!」も、実は効きません。 心のどこかが「いや、根拠ないでしょ」と突っ込んでくるからです。

効く言葉には、型があります。事実 → 読み替え → 次の一歩、の3ステップです。

① 事実 すでにできている事を ひとつ確認する 「ここまでは もうできてる」 ② 読み替え 不安・緊張を 挑戦の証と捉え直す 「不安なのは 挑戦してるからだ」 ③ 次の一歩 今日やることを ひとつだけ、小さく指す 「次はこれだけ やってみよう」 ポイント:事実から始めること。 根拠のない励ましは心が信じない。できている事実を先に置くから、②と③が効く。 これは、信頼されるコーチが選手にかける言葉の順番と同じ。

コツは、事実から始めることです。 すでにできている事実をひとつ確認してから、不安を読み替え、次の一歩を小さく指す。 これは、信頼できるコーチが選手にかける言葉の順番と同じです。

実際の変換例を並べます。左が追い込む言葉、右が勇気づけの言葉です。

追い込む言葉勇気づけの言葉
なんでまだ終わってないんだ半分までは来てる。今日は次の1章だけやろう
こんなことで緊張するな緊張するのは本気の証拠。まず深呼吸ひとつ
また失敗したらどうする前回より準備は増えてる。ダメなら直せばいい
みんなはもっとやってる先週の自分よりは進んでる。比べるならそこだ
休んでる場合じゃないここで10分休むほうが、続きが速い

見比べると、右側はどれも「事実」が入っていることに気づくと思います。 甘い言葉ではないんです。正確な言葉なんです。 自分を追い込む言葉は、実は事実を見ていません。「なんでできないんだ」は、できている部分を無視しています。 自分への優しさとは、自分を過大評価することではなく、自分を正確に見ることから始まります。

わたしが商談や大事な場面の前に、実際に自分へかけている言葉はこうです。 「準備はやった。緊張してるのは、ちゃんと挑戦してるからだ。まず最初のひとことだけ、丁寧に言おう」 事実、読み替え、次の一歩。この順番です。

自分に優しくするというのは、自分を甘やかすことではなくて、 自分の一番近くにいるコーチとして、自分に接することなんだと思います。

今回のワークで、あなた専用の勇気づけの言葉をひとつ作ってみてください。 次回は最終回。作った言葉と道具を全部つないで、「程よく頑張る」を続けるための仕組みを設計します。

今回のワーク

本文の変換表を参考に、いま挑戦していることに対する「勇気づけの言葉」を、3ステップ(事実→読み替え→次の一歩)でひとつ作ってみてください。作ったら、声に出して自分に言ってみる。しっくりこなければ、言葉を変えていい。それも仮決めです。

感じたことを、書きとめておけます

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